私的 幼児発達論

私的 幼児発達論

 ファミコンから始まる家庭用ゲームの普及が始まり性能も普及も小型化も短期間に高度に成長致しました。
数年前からゲーム脳と言う言葉が言われはじめゲームと乳幼児の発達について言及されるようになりました。
またテレビ・ビデオがもたらす影響も見逃せないと言われますが、普及を目指すメディア側は一切認めようとは
しないのは当然の事だと思われます。
ゲーム脳賛成派、反ゲーム脳派/メディア賞賛派、反メディア派等々いろいろな人たちがおられます。
私が子育てをする中で賛成、反対と言ったそんな二元的な問題ではなく子供一人一人の個性才能、
受容許容能力によって非常に大きな違いがあると感じています。
種々のメディアから発せられる諸々の情報に左右されることなく自身の子供にとって最も適した情報の与え方
を見極める事が親にとって大切な仕事であると感じております。
 今、子供達への携帯電話がまた新たなる問題となっています。
一元的に禁止するのではなく必要不必要に応じて臨機応変に対応する事が大事ではないかと思います。         20080606 住職私感

 

片岡直樹先生の事

 

 子供の自閉症や発達障害についての他の医師と一線を画した治療、養育方針を持っている先生です。
私の子供も自閉症を疑われました。主治医の一言「自閉症でも治るって言う先生がいる」をヒントにネットを
探し回り片岡教授の存在を知りました。
しかしその一方で片岡バッシングもあるのも事実です。
私がその問題の直面した頃、ちょうどテレビ・ビデオやゲームが子供達のもたらす影響について盛んに論じられていた頃です。
よく考えてみればわかるように決してテレビ放送ではテレビが子供達の発達に悪影響を及ぼすと言うはず
はありません。また新聞記事を見ても今ひとつ押しに欠ける記事ばかり、そりゃぁそうでしょう。
多くの新聞はテレビラジオのメディアも持っているのですから。
しかし一つずつ丹念に調べていけば子供の発達について多くの誤解や間違いがある事に気づきました。
私の子供は片岡先生と出会い、今は普通に小学校に通っております。
だからといってすべてにおいて片岡先生を賞賛するつもりはございません。
その子、一人一人に持って生まれた個性があり育て方があると思っています。
私の場合、我が子に対する育て方を間違えました。
でも運良くそれを早くに指摘してくれる医師にも巡り会えました。
そして我が子にあった育て方を見つけるきっかけを片岡先生は教えて下さいました。
今はもう通院もしていません。
成績は良くありませんが、それは鳶は鷹を生まないからです(笑)


「子どもとメディア」の問題に対する提言

「子どもとメディア」の問題に対する提言


社団法人 日本小児科医会
「子どもとメディア」対策委員会 2004.2.6




わが国でテレビ放送が開始されてから50 年が経過しました。メディアの

各種機器とシステムは、急速な勢いで発達し普及しています。今や国民

の6割がパソコンや携帯電話を使い、わが国も本格的なネット社会に突入

しました。

今後、デジタル技術の進歩はこのネット社会をますます複雑化し、人類は

この中で生活を営む時代に進みつつあります。

これからもメディアは発達し多様化して、そのメディアとの長時間に

及ぶ接触はいまだかつて人類が経験したことのないものとなり、心身の

発達過程にある子どもへの影響が懸念されています。

日本小児科医会の「子どもとメディア」対策委員会では、子どもに関係

するすべての人々に、現代の子どもとメディアの問題を提起します。

ここで述べるメディアとはテレビ、ビデオ、テレビゲーム、携帯用

ゲーム、インターネット、携帯電話などを意味します。

特に、乳児や幼児期ではテレビやビデオ、学童期ではそれに加えてテレビゲームや

携帯用ゲーム、思春期以降ではインターネットや携帯電話が問題となります。
Ⅰ 提言
影響の一つめは、テレビ、ビデオ視聴を含むメディア接触の低年齢化、長時間化です。
乳幼児期の子どもは、身近な人とのかかわりあい、そして遊びなどの実体験を重ねるこ
とによって、人間関係を築き、心と身体を成長させます。ところが乳児期からのメディ
ア漬けの生活では、外遊びの機会を奪い、人とのかかわり体験の不足を招きます。実際、
運動不足、睡眠不足そしてコミュニケーション能力の低下などを生じさせ、その結果、
心身の発達の遅れや歪みが生じた事例が臨床の場から報告されています。このようなメ
ディアの弊害は、ごく一部の影響を受けやすい個々の子どもの問題としてではなく、メ
ディアが子ども全体に及ぼす影響の甚大さの警鐘と私たちはとらえています。特に象徴
機能が未熟な2 歳以下の子どもや、発達に問題のある子どものテレビ画面への早期接触
や長時間化は、親子が顔をあわせ一緒に遊ぶ時間を奪い、言葉や心の発達を妨げます。
影響の二つめはメディアの内容です。メディアで流される情報は成長期の子どもに直
接的な影響をもたらします。幼児期からの暴力映像への長時間接触が、後年の暴力的行
動や事件に関係していることは、すでに明らかにされている事実です。メディアによっ
て与えられる情報の質、その影響を問う必要があります。その一方でメディアを活用し、
批判的な見方を含めて読み解く力(メディアリテラシー)を育てることが重要です。
私たち小児科医は、メディアによる子どもへの影響の重要性を認識し、メディア接触
が日本の子どもたちの成長に及ぼす影響に配慮することの緊急性、必要性を強く社会に
アピールします。そして子どもとメディアのより良い関係を作り出すために、子どもと
メディアに関する以下の具体的提言を呈示します。
具体的提言
2
1. 2 歳までのテレビ・ビデオ視聴は控えましょう。
2. 授乳中、食事中のテレビ・ビデオの視聴は止めましょう。
3. すべてのメディアへ接触する総時間を制限することが重要です。1 日2 時間までを
目安と考えます。テレビゲームは1日30 分までを目安と考えます。
4. 子ども部屋にはテレビ、ビデオ、パーソナルコンピューターを置かないようにしま
しょう。
5. 保護者と子どもでメディアを上手に利用するルールをつくりましょう。
II. 小児科医への提言:具体的な行動計画
私たちは、「子どもとメディア」の問題解決のため、小児科医が率先してこの問題を理
解し、提言に基づき行動を開始することを望みます。そのためには、日本小児科医会が
原動力となり、関係諸機関との連携を計り、具体的な行動をとることが重要と考え、以
下の具体的な行動計画を提言します。
1. 日本小児科医会の活動
1)メディア教育の重要性を理解し、提言し、行動する指導者を育成する。
(1)日本小児科医会主催の「研修セミナー」及び「子どもの心研修会」で「子どもとメディアの問題」
を提起する。
(2)多様な職域が参加できる全国規模の「子どもとメディア」研究会の設立を企画あるいは支援を行う。
2)「子どもとメディア」問題の調査・啓発活動を行う。
(1)記者発表の機会を設定し、小児科医会の「子どもとメディア」に対する提言を公表する。
(2)「子どもとメディア」に関する提言を新聞広告する。
(3)「子ども週間」の全国統一テーマとして「子どもとメディア」を取り上げるように、関係機関に要
望する。
(4)日本小児科医会雑誌へ「子どもとメディア」の問題に関する特集の掲載を企画提言する。
(5)日本医師会へ「子どもとメディア」問題を提言し、日本医師会雑誌への「子どもとメディア」問題
の掲載を企画提言する。
(6)「子どもとメディア」に関しての市民啓発パンフレット・ビデオを作製し、関係機関に配布する。
(7)「子どもとメディア」に関しての市民向け小冊子を刊行する。
(8)子どもとメディアの問題の調査を行う。
2.外来・病棟での活動
3
(1)メディア歴を問診表に組み入れる。
メディア歴を把握するための簡便な問診を作成し呈示する。
一般診療および乳幼児や就学時健診の場で利用する。
問診票からメディア歴を把握する。
メディアへの過剰で不適切な接触がある場合には、保護者と子どもに助言する。
(2)啓発教材を活用する。
啓発用のポスター・パンフレットを掲示、配布する。
啓発用の小冊子・書籍の閲覧及び貸し出しを行う。
(3)テレビ・ビデオ等を管理する。
放映する場合には内容を吟味する。
啓発ビデオを上映する。貸し出しを行う。
(4)絵本やおもちゃを整備する。
保育士やボランディアを導入する。
読み聞かせや手遊びなどを提供する空間を整備する。
3.地域での活動
(1)出生前小児保健指導(プレネイタル・ビジット)、母親学級、乳幼児健診、講演会等の場を利用し
て、子育て中の保護者への啓発を行う。
テレビ・ビデオを見ながらの育児やテレビ・ビデオに任せる育児の弊害を知らせる。
乳幼児の視聴の制限や「ノー・テレビ・デイ」等を勧める。
(2)子どもにかかわる人々(保育士、保健師、教諭等)を対象とした「子どもとメディアの問題」研修
会を開催する。
(3)保健、福祉、教育、医療等の関係機関に対して啓発活動を提言する。
保育園、幼稚園、小中学校、高校、大学、町内会、企業、医師会、自治体等に啓発活動を提案す
る。
(4)地域でのプロモーション企画(ノー・テレビ・ディほか)を設定する、あるいは支援する。
(5)啓発教材を活用する。
啓発用のポスター・パンフレットを掲示、配布する。
啓発用の小冊子・書籍の閲覧及び貸し出しを行う。
啓発ビデオを上映する。貸し出しを行う。
4.広域社会活動として
新聞やテレビ等のマスメディアを利用し、「子どもとメディア」問題を啓発する。
5.そのほか
具体的な活動を実施するために、小児科医のための「子どもとメディア」に関するガイドラインの策定
が必要である。そのために、小児科医会は種々の調査を企画し、実施する。
4
(社)日本小児科医会
「子どもとメディア」対策委員会
委 員 長: 武居 正郎 (武居小児科医院)
副委員長: 田澤 雄作 (みやぎ県南中核病院)
委 員 : 家島 厚 (茨城県立こども福祉医療センター)
内海 裕美 (吉村小児科医院)
神山 潤 (前:東京医科歯科大学、
現:東京北社会保険病院会員準備室)
佐藤 和夫 (国立病院九州医療センター)
田中 英高 (大阪医科大学)
山本 あつ子(三井記念病院)
(社)日本小児科医会 理事: 豊原 清臣
(社)日本小児科医会 副会長: 保科 清


■■ 乳幼児のテレビ・ビデオ長時間視聴は危険です

■■ 乳幼児のテレビ・ビデオ長時間視聴は危険です

日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会

谷村 雅子 高橋 香代 片岡 直樹 冨田 和巳
田辺  功 安田  正 杉原 茂孝 清野 佳紀

 最近,小児科医や発達の専門家から,言語発達や社会性の遅れがある幼児の中に,テレビ・ビデオ(以下,テレビと記す)を長時間視聴しており,テレ ビ視聴を止めると改善が見られる例があることが報告され,テレビの長時間視聴が発達に悪い影響を及ぼす可能性が指摘されています.
 日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会では,乳幼児のテレビ視聴の発達への影響を検討するため,3地域の1歳6ケ月健診対象児計1900名について 調査を行い,内外の知見と併せて検討しました.この結果,長時間視聴は1歳6ケ月時点における意味のある言葉(有意語)の出現の遅れと関係があること,特 に日常やテレビ視聴時に親子の会話が少ない家庭の長時間視聴児で有意語出現が遅れる率が高いこと,このようなテレビの影響にほとんどの親が気づいていない ことが示されました.現代社会は少子・核家族化,携帯メールやインターネットの普及などによって,家庭内でも会話が少なくなり,言語発達に問題をもつ子ど もの増加が予想されます.乳幼児期は言語発達に重要な時期であり,テレビ視聴の影響について,親も社会も認識して対処していく必要があり,下記を提言しま す.

提  言

1.2歳以下の子どもには,テレビ・ビデオを長時間見せないようにしましょう.
内容や見方によらず,長時間視聴児は言語発達が遅れる危険性が高まります.
2.テレビはつけっぱなしにせず,見たら消しましょう.
3.乳幼児にテレビ・ビデオを一人で見せないようにしましょう.
見せるときは親も一緒に歌ったり,子どもの問いかけに応えることが大切です.
4.授乳中や食事中はテレビをつけないようにしましょう.
5.乳幼児にもテレビの適切な使い方を身につけさせましょう.
見おわったら消すこと.ビデオは続けて反復視聴しないこと.
6.子ども部屋にはテレビ・ビデオを置かないようにしましょう.

解  説

(1)小児科医,発達専門家からの相次ぐ指摘
 言葉の遅れ,表情が乏しい,親と視線を合わせないなどの症状を抱えて受診する幼児の中に,テレビ・ビデオ(以下,テレビと記す)長時間視聴児で,視聴を止めると症状が改善する一群があることが,最近,相次いで報告されている1)~4).生後早期からテレビを見ていた子どもが多いが,幼児期になってからテレビに子守されたり,ビデオの反復視聴で半年のうちに症状が進んだ例もあり,長時間視聴の影響が危惧されている.
(2)現代の乳幼児家庭のテレビ環境
 乳幼児の発達へのテレビの影響を調べるため,2003年に3地域(首都,中核市,農村地区)の1歳6ケ月健診対象児の親に,子どものテレビとの関わりと 発達に関する質問紙調査(無記名式)への協力を依頼し,回答を得た17~19ケ月児1900名について解析した(回収率は地域によって異なり,平均 75.2%).1地域は15年前にほぼ同一の調査を行っている.
 15年前に較べ,核家族化,テレビに親しんで育った親の増加,ビデオや大型テレビの普及,携帯電話やインターネットなどの出現を背景に,家庭や子どもの テレビとの関わりは長時間と短時間への2極化が示され,見せ方にも多様化傾向が見られた.テレビ視聴時に親が子どもと一緒に歌ったり話しかけ,子どもが親 に質問する家庭が増えていたが,長時間一人だけで見せている家庭もあった.

 

 

 

(3)児と家庭の長時間視聴の発達への影響
 視聴時間別に運動,社会性,言語の発達状況をみると,4時間以上の子ども(長時間視聴児)では4時間未満の児に較べ,有意語出現の遅れが高率であった (1.3倍).また,子どもの近くでテレビが8時間以上ついている家庭(長時間視聴家庭)の子どもで有意語出現の遅れの率が高かった.特に,長時間視聴家 庭における長時間視聴児の有意語出現の遅れの率は短時間視聴家庭の子どもの2倍であった(図1).地域によっては,長時間視聴児に言語発達全般の遅れが認 められた.
 子どもが4時間以上テレビを見ている家庭,あるいはテレビが8時間以上ついている家庭では,食事中も食事以外のときも子どもにテレビを自由に見せている 家庭が多かった.このような長時間視聴家庭では親の生活がテレビに偏って親子の関わりの時間や他の活動が少なく,長時間視聴児は子ども自身がテレビを見た がったり自分で操作したり,消すと怒るなどテレビ好きで,遊びがテレビに偏り易い傾向があると推察された.
(4)児のテレビ視聴時の親の関わりの重要性
 テレビを親と一緒に見ている時,乳幼児は好きなものが登場すると共感を求めたり,動作のまねをしながら親の顔をみたり,指さして質問するなど親によく働 きかけ,テレビを契機とした親子のコミュニケーションが生まれる.テレビを見ながら,親が一緒に歌ったり内容について話す家庭の子どもは視聴時の反応行動 が活発で,テレビで見た話の絵本を喜ぶなど記憶に残っていることが示唆された(表1).
 しかし,テレビ視聴時には,例え親子で一緒に見ていても,親の話しかけや親子が向き合って長く会話することが少ない.一般に大人はテレビがついていると 頻繁にはしゃべらないし,相手の顔をみて話すことも少ないためであろう.従って,テレビが長時間ついていると会話が減少して言語発達の遅れを招き易い.事 実,長時間視聴児は視聴時に親が説明するなどの関わりがあっても,視聴時に指さして質問するなどの親への働きかけは減少しないが,有意語の遅れは多かった (図2).視聴時に親が関わっても長時間の視聴は児に悪影響を及ぼす.
 視聴時の親の関わりが少ない長時間視聴児では有意語出現が遅れる率が顕著に高く,そうでない児の2.7倍に達していた(図2).有意語の他,言語理解,社会性,運動能力にも遅れ傾向がみられた.従って,乳幼児にテレビ・ビデオを一人で見せてはいけない.
(5)テレビを見せ始める時から,見たら消す習慣を
 生後早期から見せ始めた子どもの方がテレビやビデオを見たがったり,自分でつけて見る率が高く,長時間視聴児が多かった.見せ始めるときから決まりを決めて見る習慣を身につけさせ,1番組見たら消す,ビデオを巻き戻して反復視聴を続けないようにすることが大切である.
(6)子どもの言語能力は一方的に聞くだけでは発達しないことを認識すべきである
 テレビの健康影響について多くの親は視力への影響を心配しているが,言語発達への影響を心配している親は少なく,むしろ言葉や知識を教えるために見せている親もいた.
 しかし,乳幼児の言語能力は大人との双方向の関わりの中で発達する.赤ちゃんは2ケ月頃から機嫌が良い時によく発声するようになり,3ケ月頃には人の怒 りや優しい声などを区別して反応する.やがて喃語(言葉を話す前段階の声)を発するようになり,8~9ケ月では聞き慣れた特定の言葉に反応したり,何か欲 しい時に声を出して大人を呼んだりするようになる.この段階でも人との関わりが少ないと声の頻度や種類が少ないことが知られている.
 10ケ月頃からは大人の行動やものと言葉とを結びつけて理解するようになって言語理解が進み,ものと自分の発する音とも結びついてくる.1歳6ケ月頃か ら大人の言葉を模倣するようになって語彙が急激に増加し,2歳になる頃から2語文を話すようになり,言語生活が確立していく.実体験を通して言葉を理解す ること,子どもに分かり易く話しかけ,子どもの話をゆっくり聞いて応えることが大切である.今回の調査結果は映像メディアからの一方的な働きかけだけでは 子どもの言語能力が発達しないことを裏付けている.
(7)米国での対応
 米国の小児科学会は,テレビや映画,ビデオ,テレビ・コンピュータゲーム,インターネットなどの映像メディアが,子どもたちの健康障害を引き起こす危険性を持っていることを指摘し,メディア教育の重要性について勧告を出した5)6). 特に,子どもの脳が発達する重要な時期に人と関わりをもつ必要があることを重視し,「小児科医は,親たちが2歳以下の子どもにテレビを見せないよう働きか けるべきである.」としている.また,小児科医に対して,親に子どものメディア歴(メディアの使用時間や見せ方)を質問し,助言するよう勧めている.
(8)臨床現場の危惧と親のテレビ観
 長時間にわたって親の関わりがなく視聴している子どもには有意語出現の遅れの他,言語理解や社会性の遅れ傾向が見られ,親への働きかけが少ない様子が示 された.この状態が続けば,親子のコミュニケーションが減退し,ますます親よりテレビへの関心が強まり,言語発達や社会性の遅れが進行して受診に至るので あろう.多くの小児科医がこのような子ども達の臨床経験からテレビと言葉遅れとの関連性を疑い,乳幼児のテレビ視聴に警告を発してきた.今回の調査でこの ような危険性がある(子どもが4時間以上放置されてテレビを見ている)家庭は1.6%存在した.
 他方,ほとんどの親はテレビを否定的には考えていなかった.多くの家庭は決まりを決めて親子で一緒にテレビを見ており,視聴時の子どもの反応や親に共感を求める可愛さ,親子の情緒的コミュニケーションの体験を肯定的に記載していた.
 しかし,乳幼児のテレビ・ビデオ長時間視聴には危険が伴うことを大人は認識すべきである.テレビ利用に際しては長時間視聴の制限と視聴時の親の関わりの重要性に留意するよう提言する.
 なお,乳幼児期のテレビ視聴の影響に関する研究は十分でない.今回示された言語発達への影響以外にも,さらに重大な悪影響が証明される可能性もあり,今後も検討を進める必要がある.
(9)小児科医,小児の健康に携わる方へ
 a.子どもと家庭のテレビ・ビデオ環境を聞き,利用法を助言して下さい.
 b.長時間視聴の子どもからテレビ・ビデオを突然遠ざけることは難しいので,具体的方法を助言して下さい.
  ・テレビにカバーを掛ける.ビデオソフトはしまっておく
  ・コンセントからはずす
  ・タイムスイッチの利用
  ・玩具や絵本を少し出しておき,テレビ以外のものにも関心を向ける
  ・テレビの無いところで遊ぶ時間を長くする
  ・子どもが部屋に入ってきた時にテレビがついていないようにする
   (起きたとき,外出から戻ったときなど)
 c.子どもに語りかけ,子どもからの働きかけに応えることの重要性を説明して下さい.

文  献

 1) 片岡直樹.新しいタイプの言葉遅れの子どもたち―長時間のテレビ・ビデオ視聴の影響.日児誌 2002;106:1535―1539.
 2)土谷みち子.子どもとメディア―乳幼児早期からのテレビ・ビデオ接触の問題点と臨床的保育活動の有効性.国立女性教育会館研究紀要 5, 2001.
 3)岩佐京子.テレビに子守をさせないで.水曜社,1977.
 4)ジェーン・ハーリー.コンピュータが子どもの心を変える.大修館書店,1999.
 5)American Academy of Pediatrics. Committee on Public Education, Policy Statement Media Education. Pediatrics 1999;104:341―343.
 6)American Academy of Pediatrics. Television and the Family, The media matters Resource Kit, 1999.

 


提言:「子どもに及ばすメディアの影響」について

2004.7.16
日本小児神経学会

  さきに日本小児科医会(2004.1.26)、日本小児科学会(2004.4.5)が「子どもとメディア」に関する提言を行った。この提言は子どもの発達 における親子の愛着形成の重要性を改めて指摘したもので評価する。しかし、日本小児神経学会としては、子どもの発達に関する専門的な立場からさらなる検討 が必要と考えて以下の提言をする。

  1. テレビ、ビデオなどの視聴は子どもの「脳とこころ」および体の成長に影響を与える可能性があるが、その時期あるいは視聴時間と方法、番組の内容などについてはさらなる科学的検討が必要である。
  2. 言葉の遅れや自閉症があたかもすべてメディアのせいのようにとらえている論評があるが、いまのところ十分な科学的根拠はない。
  3. 今後、平成16年度から始まった独立行政法人科学技術振興機構が行う子どもの長期研究�「日本の子どもの認知・行動発達に影響を与える要因の解明」などによって科学的な成果が得られることを期待する。